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魔剣
昔受けた仕事で一度だけ、法術師との共同戦線に立つ機会があった。
奴らは特殊な触媒を器物・錫杖などに封入し、外的な何某かの働き掛けを行う事で大きなパワーを発現させ使役するのだと言う。
我が剣の間合いから逃げ切れないと悟ったであろう紅のアンディは、法術の力を借りて自らの周囲に空気の障壁を纏う。
コイツが厄介だ。物理的な剣撃に微妙な誤差を招くだけではなく、いとも簡単に決定的な間合いからの離脱を許してしまう。
予想した通り奴は此方の剣撃をするりと躱し空中高く舞い上がる。身体的な能力とは明らかに違うトリッキーな身のこなしは、法術の力をフル活用した外的な作用によるモノに相違ない。
「チャンバラ屋さんにはこんな相手がお似合いカナ!?
行けー!“ビショップ・ソード”!!」
孤空に在るアンディの周囲の空間が一瞬歪んだかに見えた刹那、夥しい数の刀剣が姿を現す。
法術というモノはたまにこうして理論的・物理的法則を全く無視した動きを見せる。本当に、何時見ても不快な程に見境の無い業だと感じる。
流石にこれだけの数の「法術の刀剣」を我ら二人だけで相手にするには分が悪い。
「相棒、奴の杖の先、あの光る石だ。アレを狙え!」
黙したまま頷くダーク・アイの眼光が鋭さを増す。
久々に見る。『アレ』を。
何かの紋様が一面に施された蒼身の刀剣は、振り下ろされたその切先から尾を引きながら一条の光のラインを解放つ。
『フォトン・ブレード』!
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