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時間がゆっくりと進むようだった。
定子は先程より歩みを遅らせ、まるで俺に華麗に正装した姿を見せびらかしているようだった。
赤の唐衣の衣装一式が定子の白くきめ細かい肌を引き立てて、俺は息をする事さえ忘れ見入った。
まばたきもせずに見詰めていた俺の眼に、定子の額に差したさいしが日の光に反射し目を眩ませた。
帝の寵愛を一身に受け、尊き中宮となった定子。
片や、その定子に跪く身分しかない俺。
下衣一枚で替えた所で定子と釣り合える気になっていたのか……一体俺の何を見せたかったのだろう。
余りに眩しく華麗な立姿の定子を見たのは、ほんの一瞬しかなかった。
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