紅の衣装

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春風があまりにも穏やかすぎて…… その日のわたくしの心は弾んでいた。 窮屈な内裏から退出し、父がわたくしの為に造築した真新しい二条の里邸に入った。 久しぶりに家族一同が揃う一切経の供養は、女房にとっても心弾む出来事で皆うきうきとした面もちであったと思う。 なかなかわたくしの退出を御認め下さらない懐仁様の御寵愛を、有り難い事と感じながらも久しぶりの外の空気にほっとしてしまう自身がいた。
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