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「全く………あれ?そういえば雄ちゃんは?」
亜沙は辺りを見回し稟達に訪ねた。稟は先ほど叩かれた部分を抑えながら答えた。
「雄ならさっき他の先輩に連れて行かれましたけど……」
「あ~なる程ねぇ。雄ちゃんけっこう人気だからねぇ」
亜沙が少々呆れた表情を浮かべると、
「お~い、皆~」
一人の男子生徒が走って来た。肩の位置より少し長い茶髪をなびかせており、制服のボタンがところどころ取れている。
「ゴメンゴメン、ちょっと遅くなった」
「いやちょうどいいよ。俺達も亜沙先輩と合流したところだし」
「そっか、なら良かった」
一息ついた男子生徒、彼こそが御堂雄。稟達のもう一人の幼なじみである。
「雄ちゃ~ん、は~ろ~♪」
「あ、亜沙先輩。卒業おめでとうございます」
「うん、ありがとう。うわ、凄い荒れようだね」
ところどころ取れている制服のボタンを見ながら亜沙は雄に聞いた。すると雄は表情をひきつらせて、
「いやまぁ………先輩達が僕の第二ボタンを取り合って、結果的にほとんど取られて…」
「凄いな雄ちゃんは、ボクのクラスでも噂になってたもん」
「その原因は、やっぱりそれかな?」
上級生にかなりの人気がある原因を察した桜は雄が手にしているケースを指さした。
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