29人が本棚に入れています
本棚に追加
「雄くんのヴァイオリン、スッゴい綺麗な音なんだよねぇ」
「はい。ヴァイオリンを弾く雄くんもカッコいいんですよね」
そう、ケースの中にはヴァイオリンが入っているのだ。
雄はヴァイオリンがとても上手い。しかも弾く曲を即興で作ってしまうのだ。聞いた稟達いわく「誉め言葉が見つからないくらい凄い」らしい。
「誉めてくれるのはありがたいんだけど……なんか微妙だなぁ」
「?………あぁそうか、そうだったよな」
ただし、そのヴァイオリンを稟達もめったに聞いたことがない。その理由が、雄は人前でヴァイオリンを弾くのが好きではないのだ。
では何故卒業生が雄のヴァイオリンの腕を知っているのだろうか?
「甘かったよ、まさか先輩達に聞かれてたなんて……」
「ホント、雄ちゃんは人前で弾くの嫌いだよねぇ」
「元々趣味みたいなものでしたから。それに関していろいろ言われるのが嫌なだけですよ」
そう言って雄は軽く肩をすくめ、亜沙に尋ねた。
「そんなことより先輩、亜麻さんほっといていいんですか?」
「ふぇ?」
「ぐす………あーぢゃん、おめでどう…ひっぐ…」
亜麻を見ると涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっていた。注意、彼女はあくまで一児の母である。
「お、お母さん!!」
「やっぱり逆だよな、あれ」
「まぁ……あれが亜麻さんの個性ってことでいいんじゃない?」
最初のコメントを投稿しよう!