序章~別れ~

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「雄くんのヴァイオリン、スッゴい綺麗な音なんだよねぇ」 「はい。ヴァイオリンを弾く雄くんもカッコいいんですよね」 そう、ケースの中にはヴァイオリンが入っているのだ。 雄はヴァイオリンがとても上手い。しかも弾く曲を即興で作ってしまうのだ。聞いた稟達いわく「誉め言葉が見つからないくらい凄い」らしい。 「誉めてくれるのはありがたいんだけど……なんか微妙だなぁ」 「?………あぁそうか、そうだったよな」 ただし、そのヴァイオリンを稟達もめったに聞いたことがない。その理由が、雄は人前でヴァイオリンを弾くのが好きではないのだ。 では何故卒業生が雄のヴァイオリンの腕を知っているのだろうか? 「甘かったよ、まさか先輩達に聞かれてたなんて……」 「ホント、雄ちゃんは人前で弾くの嫌いだよねぇ」 「元々趣味みたいなものでしたから。それに関していろいろ言われるのが嫌なだけですよ」 そう言って雄は軽く肩をすくめ、亜沙に尋ねた。 「そんなことより先輩、亜麻さんほっといていいんですか?」 「ふぇ?」 「ぐす………あーぢゃん、おめでどう…ひっぐ…」 亜麻を見ると涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっていた。注意、彼女はあくまで一児の母である。 「お、お母さん!!」 「やっぱり逆だよな、あれ」 「まぁ……あれが亜麻さんの個性ってことでいいんじゃない?」
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