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「この世界には、誰もが使うことのできる“魔法”がある」
遠い昔の記憶の隅っこで、誰かがそう囁いた。
あれは誰だったか。今はもうその顔を思い出すことができない。
その人は小さな私を抱き寄せて、私の頭を撫でくり回しながらゆっくりと囁いていた。
「ただ、皆それを忘れてしまっているんだ。いや、もしかしたら知らずのうちに紡いでは解いてしまっているのか……」
彼だか彼女の言うことを、まだ幼かった私はあまりよくわからず、度々ぐずり、あきて、よく遊ぼ遊ぼうと駄々をこねたものだ。
その度に、その人は少し困ったような微苦笑を浮かべて、「もう少しね」と言うのだ。私はそれに従ってその人に抱かれたまま。遊びたくても我慢したものだ。
「それじゃあ、君のためにもっと簡単に」なんて前向上を一つ。
「ここにありますのは何の変哲もないトランプです」
取り出されたのは、本当にどこにでも売ってるようなトランプ。
その人はそのトランプを私に渡し、どこか変わったところがないかを確認させる。特に変わったところはない。
「それでは――魔法を一つ」
パラパラとトランプが音を立てて視界の中を飛び交う。小さな子供でしかない私の目にはそれさえすでに魔法のように見え。それだけで退屈していたはずの私はたったそれだけのことで驚き、飛び交うトランプへと心を奪われた。
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