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近くの文房具屋で新しく買ってきたカッター。封を切って箱から取り出す。
「手とか服切んないでよ。」
洗濯物をたたみながら母親が声をかけた。僕はそれに返事もせずに,ダンボールを敷きものさしを準備した。意味もなく五枚の画用紙を半分に切り終えたあと,僕は履いている半ズボンに切り込みを入れ始めた。
「ちょっとあんた何やってんの!」
突然母親に怒鳴られ驚いた僕は,母親の目線の先を見た。僕の履いている半ズボンが切れている。当たり前だ。僕が切れ込みを入れたのだから。
―――でも,なんで…?―――
頭が混乱した。
「ごめん。ぼーっとしてた。」
母親にそう言ったが,別段考え事をしてたわけでもない。でも僕は確かに自分でズボンを切った。その自覚はある。なんでそんなことしたのか…わからない。思い出せない。
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