9人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
雪とふるさと
働きだして、生きてきた中で一番スピードの早い一年を過ごした。
その間にメンツは変わり、残っているのは小橋河さん、尾上さん、矢野さん、鈴木さん、そして私だ。
「これでも長い方だよ」
そう言う矢野さんは、色んな派遣を渡り歩いて来たそうだ。まだ24なのに、私よりも働いている年月が長いのは、彼女が中卒で、卒業と同時に家を出て働きだしたから。
「他のトコなんてコロッコロ変わるよ」
出勤途中の車の中でそんな話しになったのは、今日で尾上さんが退社するからだ。
「今日はマッキーの所で送別会」
尾上さん本人に送別会と言われて、皆がとうとう今日か、と話し始めて、派遣で働く期間の話しになったのだ。
「保証もないからさ、本当は正社員になりたいんだよね」
一番自由な派遣を楽しんでいる、と思っていた鈴木さんがそんな事を言い出して、私は驚いた。彼女はひどい人見知りで、どんな人とも初対面では話しどころか顔も見る事ができない。私とも最初はそうだったが、今は慕ってくれてよく私の部屋に遊びに来る程だ。
「一度さぁ、ボーナスってもらってみたいよね」
ポツリと矢野さんが呟く。
皆がしんみりした時だった。
最初のコメントを投稿しよう!