01 屋上の雪

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「それで?」   他人とコミュニケーションを取る上で使ってはいけない返事を選りすぐって繰り出してみた。   鑑凪は髪を一度そっと手で整えて   「あなたも普通の人間じゃないんでしょ?」   あなた、も?   「あんたほど特殊じゃない。あんたに比べりゃ僕の方がよっぽど《普通》だ。」   他意はない。 鑑凪みたいな有名人に比べれば僕の方がよっぽど一般ぴーぽーという奴だ。   「それもそうね。私はあなたとは違うもの。」   一々癇に障る女だ。   僕の中の三国一の才色兼備と謳われた鑑凪のイメージが音を立てて崩れていくどころか軽く焼失を果たした。 お前はどこかの首相か。   「でも…あなたなら…なんとかできるかもしれない…」   消え入りそうな、しかし凛とした声でそう呟いた。   「とりあえず用件を言ってよ。そろそろ僕、『こおりづけ』の状態異常になりそうだ。」   うわぁ、今の風は寒かった。 そろそろ体温が34度を下回りそうな気分だ。 恒温動物の僕としては由々しき事態である。   「大丈夫よ。どくけしは持ってるわ。」  「意味ねえ!」   冗談は通じるようである。 ほんの少しだけ好感度が上がった。  
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