第1話:MORS

12/27
前へ
/100ページ
次へ
 男女は立ち上がり、男は希望に満ちた笑顔をし、女は涙を溢れさせながら手を握り合わせた。  闇乃は彼等に微笑んだ後、安侮と飛龍を呼んだ。 「安侮、飛龍、頼んだよ。私はボスにこのことを伝えてくる」 「りょーかい」  待っていたと更にニヤついている安侮は、ハンドルを人差し指に引っ掛け、ぶらぶらさせながら立ち上がる。飛龍も、拳銃をしまうと立ち上がった。  実はMORSの長は闇乃では無く、闇乃の更なる上司で、裏世界では最凶無敵とも呼ばれているボスなのである。安侮達はボスの顔を見ることが出来ず、今は闇乃しか見れないし、話せない。  ボスはここにはおらず、高層ビルのどこかにいる。それを知るのは勿論、闇乃だけだ。 「場所は蘇格蘭。その国のどこかに、メトゥスがいる筈。なるべく地位の高い場所へ行くべきだね」 「悪魔の気なんか、魔力を使えば軽いさ」  真顔な闇乃に対し、安侮は得意気に笑んだ。 「安侮、行くぞ」  飛龍は安侮のとこまで歩むと小さく呟く。飛龍が喋る時は、大抵これ位の音量である。 「久々の血だ。じっくり楽しませて貰うぜ」  安侮は血に飢えた赤い目を光らせる。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加