第1話:MORS

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 そしてその場で指を鳴らすと、地下なのにも関わらず風が吹き始め、安侮と飛龍を包み消え去った。         ‥      ──夜の蘇格蘭。 「……案外町は人で賑わってるんだな」  風を止ませた安侮の最初の一言だ。そう言ったのには理由も含まれている。蘇格蘭は事件が多発している国となっているのにも関わらず、国民達は何事も無かったかのように生活している。ここにいるメトゥスが、地位の高い者達しか狙わないが故なのだろうか、自分達には無関係と言った感覚を持っているのかも知れない。  最初はそう思っているのも仕方がない。 「あっ! ケル様だわっ」  すると、安侮達の近くにいる女性の一人が声を上げた。それにつられた他の女性達も振り向き、途端に黄色い声を上げる。 「キャー! ケル様素敵ですわー!」 「ケル様こちらを向いて下さーい!」 「おい、ケルが来たぞ」 「あの執事のケルか。夜なのにここまで買い出しとは流石だなぁ」  女だけでなく、男もその名前を出している。  人々の注目を浴びている男が、こちらへ歩んでくる。
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