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そしてその場で指を鳴らすと、地下なのにも関わらず風が吹き始め、安侮と飛龍を包み消え去った。
‥
──夜の蘇格蘭。
「……案外町は人で賑わってるんだな」
風を止ませた安侮の最初の一言だ。そう言ったのには理由も含まれている。蘇格蘭は事件が多発している国となっているのにも関わらず、国民達は何事も無かったかのように生活している。ここにいるメトゥスが、地位の高い者達しか狙わないが故なのだろうか、自分達には無関係と言った感覚を持っているのかも知れない。
最初はそう思っているのも仕方がない。
「あっ! ケル様だわっ」
すると、安侮達の近くにいる女性の一人が声を上げた。それにつられた他の女性達も振り向き、途端に黄色い声を上げる。
「キャー! ケル様素敵ですわー!」
「ケル様こちらを向いて下さーい!」
「おい、ケルが来たぞ」
「あの執事のケルか。夜なのにここまで買い出しとは流石だなぁ」
女だけでなく、男もその名前を出している。
人々の注目を浴びている男が、こちらへ歩んでくる。
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