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その男は少し白い顔をしており、目は澄んだサファイア色で、体は比較的細い。軽くウェーブした長い銀髪を横へと纏め、肩辺りの髪を、紺色の大きなリボンで結っている。黒縁の小さな丸めがねを掛け、首からは小さな懐中時計を下げていた。
ケルは軈て安侮達の横を通り過ぎようとする。すると、ケルと安侮の目がふと合った。何気ににこやかに笑い、そして通りすぎていった。二人は彼の後ろ姿を見る。
「うざったい笑顔だ」
安侮は苦笑を止めないまま言った。
「あんな白髪男が、未だに優しい人達に気に入られてるだなんてな」
「……奴からは魔の気を感じた」
飛龍は口を開いた。
「恐らく、奴の魔力で、ここの者達は半分眠らされている」
「いわゆる催眠術って奴か。古いねぇ」
「これは弱い魔力だ。魔法で簡単に解除出来る。──あの男女は魔法を使えたようだな」
「ここの奴らの目を一辺に覚まさせるには、やっぱりあの白い羊を消すしかない訳ね」
「そう言うことだな」
暫くするとケルが袋を携え、先程来た道を戻ろうとしていた。もう一度すれ違い、安侮達は振り返る。そして彼等もケルの後を、気配に気を付けつつついていった。
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