第1話:MORS

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「成程、正義の味方かと思えば、貴殿方も悪者でしたか」 「それについての解釈はご自由に。ま、先程のケル様の食欲っぷりは、最高だったよ」 「恐縮です。ですが、我々メトゥスを存じる者は、生かしておく訳にはいきません」  ケルは優雅な仕草で、甲を上に両手をスゥッと横へ広げた。彼の体を、紫色のオーラが纏う。ケルの周りを風が吹き、それは彼に向かっていた。まるで彼に力を与えるかの如く。 「私の餌になって貰いますよ。貴殿方の心身には、沢山の血の味が染み込んでいますからね。さぞかしこの世のものとは思えない極上の味なのでしょう」 「そりゃあこっちの台詞だぜ、羊さん。貴族達の味は、苦い程に甘くてとろみがあるからなぁ……」  安侮はハンドルを、にやけた口元へ寄せる。飛龍は、もう片手から機関銃を出した。  ケルを守る様に吹き荒れる強風に、先程割れたコップや皿の欠片、そして包丁、ナイフ等、様々な刃物が巻き込まれ、風に乗る。ケルが横にしていた片手を前へ素早く振ると、風は安侮達へと方向を変える。無論、刃物達は彼等に牙を剥き、風に乗って安侮達に襲い掛った。  安侮達は各々左右へ横っ飛びをし、攻撃を回避した。しかしケルが指を軽く動かすだけで、風は刃物を連れて、安侮達をターゲットにして向かうのだ。
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