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「私が油断していたとでも言いたかったのですか?」
崩れ落ちる死体の向こうには、偽った優しい笑みを見せるケルがいた。
飛龍はそのまま彼に見開くが、少しすると、彼の目線が少しだけ変わっていた。それにケルは恐らく気付いていない。
「私の操る風は、どんなものでも操ってみせますよ。貴殿方も私の人形に、さっさとなれば良いでしょうに」
「ごっちゃごちゃうっせーよ、執事の分際で」
「!?」
ケルは真上から降り注ぐ殺気に気付いた。真上からは、ハンドルを両手で構えた安侮が落下してくる。
「な……っ!」
「さっさと見せろよ、悪魔の血をな!!」
「くっ!」
ケルは慌てながらも別の人形を使って盾にした。
だが、安侮の鋭利な武器は、その様な盾で防げる訳が無い。安侮が遠慮無く切り掛ると、人形は呆気なく二つになり、その間から、ケルの酷く驚愕した表情が見えた。
「そ、そんな馬鹿なっ……!」
ケルはやむをえず腕を盾にした。
──ザシュッ!
切り裂かれる音が強風の中響く。メトゥスは、国民の一部が使う魔法よりも魔力が強く、安侮の武器でも腕は取れることは無かった。だがかなり負傷し、ダメージを受けたのは確かだ。
「案外かってぇなあ。俺はレアが好みなんですけど」
少し離れた安侮はニヤリと笑う。
ケルは、血が流れ出る自分の腕をジッと見てから、こちらも負けじと微笑んだ。
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