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「……?」
安侮は風の中彼に向かうが、呼吸に僅かな違和感を覚え、眉をひそめる。思う様にリズミカルな呼吸が出来ないのだ。
(息がしずらい? 風の強さでも、それ程呼吸に影響は無い筈だ。……だが何かがおかしいな……)
ケルは安侮の気配を風の中で感じ取った。彼は風の中にいると分かり、そして状態を把握すると思わず苦笑を溢す。
(愚かだ、自らこちらへ向かおうとは。そして、自分達が今どんな状況にさらされているか、分かる筈がありません)
勝利が見えるといった苦笑を浮かべた後、腕や指で、操り人形を動かす様な仕草を取る。
(……俺の気を感じたか)
安侮がそれに気付いたと同時、前方から凶器達が襲う。安侮はハンドルや腕で顔や体を覆うが、露な部分は容赦無く裂かれる。
手応えを感じたケルは目を細めた。そして、
「見付けましたよ、安侮愁人」
ケルは、今までに無い黒さを込めた笑みを浮かべた。それは、獲物を見付けた瞬間の満面の笑みそのものだった。
そして色の風を魔力で掻き分け、安侮の姿を晒す。彼は空中にいて、そこにケルは向かって飛ぶ。
「安侮の首は私が頂く!」
手に一番大きな刃物を握り、開ききった目を輝かせる。安侮は、そんな彼を無言で見る。
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