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そして暫くして術が解けると、気付けば安侮達の服はびしょ濡れになっていた。屋敷内も、まるで満タンまで溜っていた水が全て抜けた後の光景になっている。絨毯は水分を十分に含み、天井からぶら下がるシャンデリアからは、雫が休まず降ってくる。
「……ああ! なーる! 風と言う名の幻を見せてる間に、俺達を溺死させようとしてた訳かっ」
やっと謎が解けた安侮は、手を拳でポンッと叩いた。
「だから首は頂くーって余裕ぶっこいてたのか。──はっ! 余計に腹立つなぁ。胸部をもっと捻り潰してやるべきだったぜ」
封印した後でもイラッと来た安侮は、床へ向けて思い切り吐き捨てた。飛龍もそれを理解し、静かに口を開いた。
「幻影の術も使うとは。こんなメトゥスまで現世に存在しているとなると、更に厄介事が起こる」
「ま、俺は楽しけりゃ何でも良いけどな。強がりな馬鹿は即ぶっ潰すが、──これは忘れない様にしなきゃ、上司に叱られるわな」
と、片手に持つ黒い箱を何度も上へ軽く投げた。
‥
「無事、任務は完了しました」
地下のトーキョー教会とリンクしているビルのどこか。
広々とした部屋で、闇乃は、奥の大きな机に肘を付け、指を組んでいる影の男に報告をする。
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