第1話:MORS

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 この男こそMORSのボスで、彼を相手にして生きて帰った者は誰一人いないと言われている。どんなに強いメトゥスが相手でも、彼にたったの数秒で消されると言う並外れの力を持つが、訳あって今の彼はここにいるのである。  闇乃はそれを知る人物だが、口に出す事は無い。出そうとすれば、即刻消される恐れがあるからだ。 「ふむ。ご苦労だった。今後もこの調子で頼んだよ、闇乃くん」 「……はい」  一先ずホッとした闇乃は頭を下げ、その部屋から退室した。退室してからもその場で立ったままだったが、目を閉じると、ゆっくりと扉から離れていった。 「お世話になりました」 「きっと皆も、すぐに目を覚ましてくれるでしょう」  祭壇にて依頼人の二人は、三人に涙目で感謝した。 「なあ、あんた達も魔法が使えたなら、あんな弱い催眠術くらい簡単に解けんじゃねえの?」  と、安侮は口端を吊り上げた。二人は互いの顔を見合わせた後、うつ向かせる。 「催眠術ならば何とか解ける力はあります。──しかし、ケルの力は尋常ではない」 「ケルを追い払おうとした連中は、催眠術には掛ってない人達。分かる、安侮?」  腕を組む闇乃は安侮に振り向いた。安侮は理解し、鼻で笑ってから顔を伏せた。闇乃は彼を見てから二人へ顔を戻した。
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