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「今はロックの時代だぜ。何なら聞いてみるか? 今MUCCの曲聞いてるけど」
「……またの機会にするよ」
闇乃は髪を結び終え、縛り具合を鏡の自分と睨み合いながら確かめる。そして安侮の誘いに振り返ると、軽く眉根を寄せて苦笑いをした。
別に今の世代の音楽が嫌いな訳ではない。寧ろ好きな方だ。しかし、闇乃は安侮達程、休む暇が今は無いのである。先程趣味で髪型を変えていると言ったが、それを仕事に使うことも多々あったりする。それは後程分かるだろう。
安侮はCDジャケットを指でもてあそびながら、笑みを止めずに眉を上げた。
「んなに忙しいと老けるよ?」
「余計なお世話だよっ」
安侮がからかった口調で悪態を吐いてやると、闇乃はムッとした顔で安侮に目を細め、個室を後にした。
「飛龍、お前聞くか?」
向かい側の小さな机つきの椅子を横向きで足を組んで座り、小さい本を黙読している飛龍に聞く。だが飛龍は、まるで安侮の声が聞こえてない様に見える。
安侮はそのまま静止していたが、彼も闇乃みたいに不機嫌そうに膨れると、CDジャケットをソファに置き、イヤホンを乱暴に外し立ち上がる。
「はあ。ったくどいつもこいつもぅっ」
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