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安侮に呼ばれ、飛龍は目線を戻した。
「彼女はリーナだと。金持ちなんだってさ」
「良かったら、私の屋敷でお茶でも如何かしら?」
リーナは白い顔の中、赤い唇を綻ばせた。
飛龍は、その表情が何故か気に入らず、無表情だった中、眉を少しだけひそめる。
「俺は遠慮させて貰う」
そして安侮達から離れていった、離れる際、安侮にある一言を囁いてから。安侮は少し目を丸くするが、直ぐに笑みを作る。
──お前は無防備過ぎる。
(そこまでは隙だらけじゃないぜ、隠れ心配性)
そして安侮はリーナと共に屋敷へと向かった。
飛龍は彼等に振り向き、呆れた溜め息をついた。
「お待たせ」
そこへ闇乃の声が後ろから聞こえた。そして飛龍は、闇乃の姿に静かに驚いた。
‥
彼女の住む屋敷は、煉瓦模様は変わらずだが、民家よりも何倍ものの大きさだ。
リーナは安侮を屋敷の中へ入れ、ダイニングルームまで案内した。
入り口からダイニングルームまで行く間、安侮は何人かのメイドを見掛けた。メイドは皆、飛龍みたいに無表情に見えた。おまけに、生気を感じなかった様な……。
「どうかしたの、安侮さん?」
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