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「ん? いいえ。レディの住むお屋敷に、つい見とれてしまいまして」
安侮が腹部に手を当てながら微笑むと、リーナは上品に笑う。
「私の自慢ですのよ。さあ、座りなさって」
「失礼します」
メイドがずらした椅子に二人は向かい合う形で腰を下ろす。このテーブルは長いが、対談出来る程の距離である。
「あなた達はどこから来たの?」
メイドが茶を用意してくる間、リーナは興味津々に目を輝かせる。
昼間なのに窓に厚いカーテンをしているのが少し気になったが、安侮は機嫌を損ねないようにしようと彼女の目を見る。
「遠い国から来た。それだけだよ」
「そう。──それでは、何をしに此処へ?」
「まあ、仕事だな。仕事の為なら世界の裏側だって飛んで行く。それが俺達だ」
ふーん、と、リーナは目を細め頷き、顎を両手に乗せた。そして、メイドが用意した紅茶入りのカップを右手に、小皿を左手で軽く持ち上げた。
「何のお仕事なのかしら?」
安侮はカップを口につける直前でカップを止め、彼女に目を細めた。一口飲み、カチャリと小皿に乗せるリーナは微笑を作り、こちらを優しく見据える。そんな彼女を見つめていたが、口端を吊り上げると、まだ飲むこと無くカップを戻した。
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