第2話:永久ニ美シキ血マミレノ夫妻

12/32
前へ
/100ページ
次へ
 飛龍は少しだけ見開いた。頭の中でとっさに浮かんだのは、彼女の姿だ。  彼女について行ったきり、安侮はあれから何も連絡して来ない。  正かとは思いたいが、飛龍は馬鹿な真似ばかりする安侮を心配なんかしたくなく、内心で息を吐いた。 「ところで安侮はどうしたの?」 「……女について行った」  飛龍は呆れた口調で吐き落とした。それを聞いた闇乃は目をパチクリさせる。 「安侮ってそこまで女好きだった?」 「知らん」  無表情でも苛立つ気持ちがみえみえな飛龍に、闇乃は困った笑みを作った。     ‥  時は既に日没を迎えていた。  リーナは、ダイニングルームにある暖炉の前の椅子に座っていた。安侮は変わらず同じ椅子に座っており、カーテンを開いた窓から、闇に覆われてゆく夕空を見ていた。 「ところで安侮さん」  暖炉の燃え盛る火を見つめながら、リーナは彼を呼んだ。安侮は無言で彼女へ顔を向ける。 「貴方、言いましたわね、殺し屋だって」 「そうですが、それが何か?」 「……なら、血を見るのは好きと?」  そう問う彼女の声が急に静まった。同意を求めるような、ボリュームは小さいが、どこか圧している思いが込もっている。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加