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安侮は彼女の美しい後ろ姿を見つめ、そして目を閉じ笑みを溢す。
「そりゃあもう好きですね。ターゲットを切り刻んだ時に叫ぶ声と共鳴する鮮血は、とても美しい光景です」
「ふふ、そうよね」
嬉しさが込み上がる感じで、リーナは笑いながら震えている。安侮は明らかに普通じゃないと感付き始め、口からの笑みを忘れてしまっていた。
「貴方、沢山の血の匂いがするもの。芳しいその香り、私にも分け与えて欲しいわ」
「リーナ嬢、一体如何されたのです?」
改めて口で弧を描き、彼女に話し掛ける。
リーナはゆっくりと立ち上がると、座っている安侮の前まで歩を進め、そのまま見下ろす。
「貴方自身の血を味わいたい。最近飲み物が紅茶ばかりで飽々してきた所なの。──イヴァンはホント、最近役立たずで困者だわ」
(イヴァン?)
初めて聞くその名前に、安侮は密かに眉をひそめた。
否、それよりも、さっきから問題だらけの発言をしている彼女。それについてもう一度問いだそうとした。
その時、目の前が急に霞んで見えてきた。さっきまでは何とも無かったのに、瞼も急に重くなる。
「あの可愛い少女の血を最初に貰うつもりだったけど、先ずは味わってみるわ、──貴方の血を」
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