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暖炉の火が急に消え、廷内は夜の闇に包まれる。暗くなったことの追い打ちで、安侮を襲う睡魔は拡大した。
そして椅子から落ち、安侮は深い眠りに落ちてしまった。
‥
日が完全に落ちた頃、屋敷の屋根に一人の男が立っていた。見た目は30代辺りで、短い黒髪のオールバックに、黒いエンビ服を着、黒いマントをはためかせていた。
「今日もリーナの為に、美しい女を見付け出さねばな」
そう言うと彼の姿は影になり、何十匹ものコウモリと化し、町へ向かって飛び立った。
‥
屋敷の地下室はとても暗く、一本のロウソクに火がともされても、あまり頼りない。
その地下室で、すすり泣くか細い声が僅かに響き渡る。
声の主は、小さな石の牢屋に閉じ込められていた。町の人達と同じ服を着ている、10代後半くらいの少女だ。
「う、うぅ。助けて。暗いよ……怖いよ……」
少女は涙で顔を汚しながら泣いていた。そして、首から下げているロケットを握ると、小さな蓋をパカッと開き、僅かな明かりで照らす。
「助けて、お爺ちゃん……」
幼い頃の自分と一緒に笑顔で写っている老人の顔に、彼女の涙が一粒溢れた。
‥
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