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夜になると、皆メトゥスを警戒しているが故か、家々には明かりがついていない。たまに野良犬の鳴き声が聞こえる以外は物音も一つ無い。これが何十年も続いているとなると、既に習慣となっているのかも知れない。旅人が来たら、彼等はその者を、無理にでも屋内へ引っ張り込むらしい。
闇乃と飛龍は、彼等に気付かれない様に警戒しつつ外出した。そして、なるべく人の気配があまりない場所へと、素早く移動した。
軈て路地裏前で足を止める。
「……メトゥスの気がまるで感じない」
おかしいな、と闇乃は顎に触れ、首を傾げる。
「違う、気配を消しているんだ。まるで別の魔力で抑えている感覚がする」
飛龍は安侮に言った事と似た話をした。闇乃は、ほほうと何度も頷く。
「でも、気配を消す力はどこへ行ったって変わらないからね。つまりは近くにいたって気配は変わらない」
だからこそ闇乃達は更に警戒するべきなのだ。相手が息を殺して獲物に近付いているのなら、こちらも同じ考えをしなければならない。
その時、頭上から突然、翼が何十枚も羽ばたく音が、彼等の空気を激しく振動させた。二人が素早く見上げると、そこには黒いカーテン──否、無数のコウモリが月の光を遮っていた。
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