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「何があろうと、リーナ様の機嫌だけは損なうな。さもなければ、ここでお前達も処分してやるぞ」
「今すぐ手術を始めます」
メイド達はタイミングぴったりに頭を下げ、三人共同じ角度で体を折り曲げた。
そこへ手術室の扉が開いた。
「勝手な入室は許さんぞ」
メイド長は開いた扉に向かって声を上げた。
「申し訳ありません、メイド長」
新たなメイドが三人現れた。一人はお辞儀をし、あとの二人は担架を使い、誰かを運んできた。
「リーナ様のご命令です。この男の生き血が欲しいと、おっしゃっていました」
「……分かった。手術台へ移せ」
「かしこまりました」
あっさりと許可を与えたメイド長に、メイドは再び同じ様にお辞儀をする。そして担架を握る二人は、手術台へと足を動かした。
担架で運ばれたのは、睡眠薬で眠っている安侮だ。安侮は手術台へ移されても、未だに目を閉じたままである。
「それでは頼んだぞ」
「かしこまりました」
手袋をはめたメイドはカチャリとメスを持った。磨き抜かれたメスは恐ろしい程にギラリと光を放つ。そして刃を、彼の首元までゆっくりと下ろす。そこで少し前へずらし、一気に引いた。
しかし、裂いた筈の安侮の首からは血が噴きださない。それどころか、傷一つ出来ていなかった。
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