第2話:永久ニ美シキ血マミレノ夫妻

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 そんな部屋へ入る為の扉が大袈裟な音と共に開かれる。だがリーナは誰が訪ねて来たかは背後を見せても既に理解しており、苛立たしそうに深く息を吐くとクルリと振り返った。 「またお会いしましたね、マダム?」  緑の液体が既に服へ染み込んでいる姿で登場したのは安侮だ。初対面の時とは違った雰囲気が漂う笑顔でリーナに微笑み掛けている。  リーナはその姿に色々な意味で怪訝そうな表情で返した。そして笑顔で返事する事無く、そのままで相手を睨み返した。 「どうやら、私のメイド達を可愛がってくれたみたいね」 「ええ、愛を込めた御遊戯を存分にさせて貰いました。──愛液の味は最悪でしたがね」  安侮がそう肩をすくめて見せると、リーナはクスクス笑い出した。 「そりゃあそうですわ。屍人の味なんか、腐った卵同様。矢張り新鮮な生き血でなければ極上とは呼べませんわ」  安侮は彼女のある言葉がかなり引っ掛かった気がし、無意味かも知れないが、念のため脳味噌の片隅にでも刻んで置こうかと思った。 「……仕方ないわね」  ポツリと呟いた後、リーナの周りからコウモリが数匹現れる。それが彼女の背中部分へと消えると、彼女の背中からコウモリの翼が生えた。
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