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リーナがコウモリの翼を広げた瞬く間、彼女の背後の大きな窓が解放された。其程気圧の影響は無い程の高さの筈だが、風が明らかに外へと吸い込まれている。まるで二人を外へと誘う様だ。
リーナは微笑を浮かべたまま床より浮遊し、外に奪われて行く風に流れる様に消えて行った。逃げる訳ではあるまいと確信している安侮は妖笑を浮かべると足を進め、窓から直ぐ上の屋根へと跳び移った。
「今宵は月が恐ろしい程に綺麗ね」
翼を使って浮遊しているリーナの背後を、プラチナに輝く満月の光が照らしていた。
「全く」
微風に髪を揺らし、目を細めながら、安侮はリーナと満月を同時に眺める。
「貴方の血を、満月は欲している。──真っ血色になって、更なる美貌を纏うことでしょうね」
「おや、其れは俺の台詞じゃあ無いですか? 俺の色々な奴らの汚い血より、──リーナ嬢の綺麗な血まみれの方を満月は欲している」
「既に分かっていたのね、私達が吸血鬼だと謂うことを」
安侮はハンドルを回しながら取り出し、リーナは両手を組み、組んだ手から十字架型の剣が光を溢れ出させながら現れた。
「おや、吸血鬼は十字架を嫌うと思ったんだけどなあ?」
「貴方は勘違いしている様ね。吸血鬼は、十字架ごときでは退かない。現にこの様に、武器にもしているのだから」
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