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「俺は吸血鬼には興味が有りませんので、ねっ」
ガキン! と音を鳴らしながら、リーナの握る十字架を弾き上げる。
しかしリーナは怯まず、寧ろ是時を機会だと窺った。其の証拠が、今にも壊れそうな、リーナの美しい微笑。その微笑からはとてつも無き殺気が溢れ、安侮は其れを全身で感じ取った。変わらず笑んだまま、鳥肌と武者震いを混ぜ併せた悪寒が脊髄を突き貫いた。
リーナの高く掲げた逆十字架が、月光に寄り蒼白く輝いた瞬間、幻想的な幾筋もの蒼き光が逆十字架より溢れ、辺りに広がって行く。
「アドウェルサス・デウス(逆神)」
呪文の如くリーナが静かにそう放つと、蒼白い光が、どす黒さを誇る血の色へと変化した。
「名残惜しいけれど、死になさいな」
リーナはバサリと翼を一振りすると高く舞い上がり、逆十字架の剣を、血い曲線を描く様に真上から真下へと一気に振り下ろす。その衝撃から発される僅かな波動で、安侮は危険度を判断する。そして避けるべき技だと今キャッチすれば素早く翻し、技を背面すれすれで避ける。
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