手のなるほうへ

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「今日来る転校生って、どんな子だろう?」 蒼は芯が丸くなった鉛筆を削りながら、ふとこんな事を言った。 「さぁ、あまり興味ないなぁ、」 紅は蒼の質問には興味を示さず机に頬づえをついて、空を見ていた。 「紅は何でも興味がないねぇ、」 蒼はそんな紅を見て静かに笑った。彼女もそんな蒼を見て、なんだかおかしくなって笑っていると、休み時間だと言うのに、担任の教師が教室の戸をあけ入ってきた。 「皆、席につきなさい。」 担任の号令で生徒たちは慌ただしく席についたが、静かになるまでには少し時間がかかった。 暫くして、担任は一同をゆっくり見渡すと、今入ってきた戸へ歩み寄っていった。 「入りなさい、」 担任は戸を開けてそう声をかけると、一人の少女が入ってきた。 「一寸、紅、あの娘だよ。」 転校生は、と蒼は続けて言った。 紅は黙って頷くと、前に立っている少女を見た。 少女は、紅と同じ小学生だというのにいやに大人っぽく、気味の悪いほど整った顔をしていた。紅はそんな彼女に嫉妬心をかりたてられていたが、一方で彼女に対して興味が湧いていた。 「…という事で、家城は1年だけですが、皆仲良くするように。以上。」 担任は其だけ言うと教室をあとにした。 ヤシロキョウという少女は、左端一番後ろの席に座ると恥ずかしいのか窓の外をしきりに見ていた。教室のあちこちで生徒たちが彼女について話していたが、誰一人として彼女に話かける生徒はいなかった。それはおそらく、彼女が類稀な美貌の持ち主であるからであろう。
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