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「別にわしの手を使わずとも、お主で十分じゃろ?
この憧双の技を、全て会得しておるのじゃから。」
「まだまだ現役の師匠を差し置いて、ひよっこの弟子がでしゃばるわけにはいきませんよ。」
憧双の苦笑にケヴィンは苦笑で返し、再び黒い羽根を背中から出した。
「行きましょう。
次期魔王の選定は、急務ですから。」
「前王を悼む間もないな……」
ケヴィンは小さな憧双を抱え上げると、ゆっくりと上昇を始める。
「あまり好かれていない王でしたからね……」
「彼は稀に見る凶徒じゃった。
次の魔王様は、前王の尻拭いからせねばな。」
どこか苦いものを含んだようなケヴィンの表情に憧双は小さく笑い、大分長くなってきた白い髭を撫でた。
「とにかく急ぎますよ?
城にはすでに憧双様と私以外、全て揃っているんですから。」
好々爺のような憧双にケヴィンは小さくため息をつき、闇にそびえる城に向かって羽根を動かしたのだった。
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