キリストの誕生日

8/11

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
「そっか…でもあたしもその中に入ってる?」 不安げな透。 「…うん」 あたり前だ馬鹿。 人と関わるのが苦手な俺がこんなに一緒にいる…それだけですごいことに、気付けよ。 「…ならよし。歩こうよ、幸せになりたいし」 さっきまでの不安を消すように、透は立ち上がって俺に手を差し出した。 「…それはまずくねぇ?」 手なんか繋いだら、誤解されかねない。 俺ら、何もないわけじゃないから… 俺は独り身だから平気だけど、透は容姿や言動で目立つ子だから、遠距離彼氏がいるって、クラスの大半は知ってる。 「人の目気にしてるなら別にいいの。こんなにカップルばっかりだと大丈夫だよ…啓介が嫌なら別だけど」 そう言った透はにこにこ顔で、俺はついつい手を取り立ち上がった。 「今日はイブだもん…だから大丈夫」 今日だけは神様が許してくれるとでも言いたいのか? 「なんの自信だよ」 「透さまの」 「うわっ、偉そう」 「あはは」 俺らは中学生みたいに変に緊張しながら、春の小道を歩く。 俺の手の先には透の手が繋がれてて、家で繋ぐよりも、嬉しい。 俺の透じゃない わかってる。 でも、外で手を繋ぐってことで周りの人にカップルだと認識される。 今だけ。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加