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「そっか…でもあたしもその中に入ってる?」
不安げな透。
「…うん」
あたり前だ馬鹿。
人と関わるのが苦手な俺がこんなに一緒にいる…それだけですごいことに、気付けよ。
「…ならよし。歩こうよ、幸せになりたいし」
さっきまでの不安を消すように、透は立ち上がって俺に手を差し出した。
「…それはまずくねぇ?」
手なんか繋いだら、誤解されかねない。
俺ら、何もないわけじゃないから…
俺は独り身だから平気だけど、透は容姿や言動で目立つ子だから、遠距離彼氏がいるって、クラスの大半は知ってる。
「人の目気にしてるなら別にいいの。こんなにカップルばっかりだと大丈夫だよ…啓介が嫌なら別だけど」
そう言った透はにこにこ顔で、俺はついつい手を取り立ち上がった。
「今日はイブだもん…だから大丈夫」
今日だけは神様が許してくれるとでも言いたいのか?
「なんの自信だよ」
「透さまの」
「うわっ、偉そう」
「あはは」
俺らは中学生みたいに変に緊張しながら、春の小道を歩く。
俺の手の先には透の手が繋がれてて、家で繋ぐよりも、嬉しい。
俺の透じゃない
わかってる。
でも、外で手を繋ぐってことで周りの人にカップルだと認識される。
今だけ。
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