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『……くそぅ………。』
義之は汗でびっしょりになった顔を首にかけてあるタオルで拭きながら言った。
明らかに疲れていた。
当然だ。
地面を掘り続けてから三時間は経とうとしている。
昼間から一点、辺りは夕焼けに染まっていた。
オレも腕の筋肉が乳酸で一杯になっているのを感じていた。明日以降激しい筋肉痛に襲われるであろう事が容易に想像できた。
実は銀杏の木の下に埋めたという事以外、三人共具体的なポイント等は覚えておらず、手当たり次第に1メートル位の穴をいくつも掘り続けていた。
しかし一向にそれらしい物は出て来なかった。
それでもオレ達掘り続けてた。
時間は更に経過し、次第に俺達は焦り始めた。
必死に当時の記憶を思い返し、各自憶測めいた情報を出し合うが、余計に錯綜するだけで依然として結果は出なかった。
そしていよいよ周りの道には街灯が点き始め、空の主は太陽から月に変わった。
『おいおいまだやってたのかい。今日はもう帰った方がいいんじゃないか?』
突然の声。用務員さんだ。
俺達は力無く頷くだけで言葉が出なかった。
疲労困憊、その言葉以外この状況を説明する事は出来なかった。
『明日時間あるか?』
義之がオレと美奈に言った。その顔は真剣そのものだった。
『午前早い時間なら、帰りのこともあるし、昼までは居れないかな。』
美奈だ。
オレはお前等に付き合うよと言った。
『よし、明日ちょっと早いけど7時に集合しよう。午前中がタイムリミットだ。なんとしても見つけないとな。』
義之の言葉にオレと美奈も同意、同時に今日は撤収する事にした。
地面は無数の穴が空いた状態だったが、用務員さんが明日元通りにしてくれればいいと言ってくれたのでそのまま帰ることにした。
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