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悠久悲恋
この身等、滅びてしまえば良いのに。
叶わぬ願いを胸に秘め、もう幾年が過ぎ去ったのか。
泪等枯れ果てる程に、喜び等、嬉しさ等、忘れてしまう程に……。
何故私は生きているのだろう?
此処は地獄だ。
どんなに想っても、彼の人はいない。
大切な人達、想いも、愛しさも、慈しみすら、溢れて止まらず。
全て、総て――この儚く、哀しき両手から、零れ堕ちていく……。
止めて、止めて、止めて止めて止めて――!
私から総てを盗らないで、奪わないで、還して下さい。
帰して、返して、孵して、還して――!
嗚呼、この身等、いっそ朽ち、腐り果ててしまえ!
要らないの、愛しい貴方さえ、大切な人達さえ、私の下に還してくれたなら、他にはもう、何も望まない。
必要ならば、この生命さえ捧げます。
だから還して、私を一人にしないで、老いていかないで、置いていかないで……。
私をもう一度だけ、何も知らなかったあの頃へ帰して、二度と過ちは犯さないと誓います。
嗚呼、アレは人間が手にしてはいけないモノだったのに、決して踏み入れてはいけない領域だったのに――。
それを口にした皆は苦しみ、やがて朽ち果て、そして……私だけが残った。
それでも、せめて貴方さえ生きていてくれたなら、私の傍にいてくれたなら。
苦しみながらも、哀しみながらでも、貴方の下で、まだほんの少し……幸せでいられたのに。
何故、何故……貴方すらも、私を置いて逝ってしまったの?
もう二度と、後悔も出来ない、謝る事すら出来ない。
刻が残酷に、無慈悲に貴方を連れ去ったから。
――貴方を、愛しています。
そんな簡単な言葉、たった一言すら、貴方に伝えられなかった。
この身に燻る想い、爆ぜる火種でいっそ、全て焼き尽くしてしまえば楽になれるのに。
なのにこの身は滅ばぬ、朽ち果てぬ、あな朽ち惜しや、恨めしや。
お願い、誰か私を殺して――!
悲痛な叫びは荒野へと消え入り、やがて総てを飲み込んで往く。
そして私はようやく、改めて気付く。
此処にいるのは私一人、生きているのは私一人、他には誰もいない。
全て、総て、足元に連なる山の様に、重なり合い、転がり、群がる塊と為った。
そうして小さく笑う、その瞳から零れ堕ちる……絶望が一滴――。
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