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ころり噺
その三匹は、昔から仲が悪かったのさ。
ずっと一緒にいなければいけないのに、すぐに喧嘩をしちまう。
お陰で誰か一匹でもいなくなった日は、必ず何かが欠けるんだ。
え、何の噺かって?
……知ってる?
カマイタチ三兄弟の、とってもおかしなお噺だよ。
おやおや、今日も人間が転ばされているね。
……あれ?
だけど変だよ。
何かが、変だ。
あぁ、そうだよそうだ。
いつもとは違って、転んで怪我をしても傷を治してくれる、三男がいないんだ。
あぁ、寂しそうだね。
強情など張らないで、素直に謝れば良いのにね。
駄目だよ君達は、誰か一匹でも欠けると、成り立たないでしょう。
――みゅうみゅうみゅう。
ほらほら、長男が鳴いているよ、三男がいないと哀しいんだよ。
――みゃあみゃあみゃあ。
あぁ、寂しさにつられたのかな?
次男までも鳴きだしてしまったよ。
早く帰っておいで、皆君がいないと寂しいそうだ。
それに何より、君がいないと、怪我をしても治療が出来ない。
――みゅうみゅうみゅう。
とうとう長男が泣きだした。
円らな瞳から大粒の涙を流して、次男を見たよ。
――みゃあみゃあみゃあ。
――……きゅう。
あぁ、あすこの物陰にいるのは、三男だ。
二匹の輪の中に入りたそうに、塗り薬が入った壺の後ろから、顔を出しているよ。
可愛いね。
微笑ましいよ。
ほら、もう誰も怒っていないから、そこから出ておいで。
――きゅうきゅうきゅう。
三男も泣きだしちゃって、お互い近付くと、抱き合いながら泣いているよ。
あぁ良かった、これでほら、元通り。
また三匹で、仕事をこなせるよ。
次男が人間を転ばせて、長男が怪我をさせる、そうして三男が傷を治してあげるのさ。
……でも、まだちょっと心配だよね?
だって最初にも言ったもの、この三匹は仲が悪いんだ。
だからまた、近い内に喧嘩をしちまうかもね。
その時はまた……どれかが欠けるんだ。
ほら、そんな事を言う内に、また三匹の喧嘩が始まった。
本当に仲が悪いよね、先刻仲直りしたのは何処行ったのかな?
本当は三匹共、寂しがり屋なのに、ねぇ。
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