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目が覚めると、私はお姫さまで、高い高い、イバラに守られた塔で眠っていた。百年の眠りの呪いをかけられて。
「やっと見つけた」
王子さまが、眠れる私を見つけてほっと胸をなでおろす。
「寝てりゃぁ大人しくてかわいいのにな」
くすりと笑って、キスをする。
「寝てりゃ可愛いってなによ!」
私は目を覚まして、勢いよく起き上がった。
「お、」
目を覚ますとそこは塔なんかじゃなくて、ただの草むら。王子さまは……あいつ。
夢だよなぁ、私がお姫さまだなんて。
現実の王子さまを見て、いろんな気持ちが交錯する。
「怒るなよ」
王子さま改め、憎らしい今日限りのセンセは私の頭をぐりぐりなでる。
「怒ってなんかないよ」
子供扱いしないで!
手を振りほどきたいけど、そうやってなでられるのが好きな私。勝てないなぁって思った。
「なんの用」
見つけてくれた嬉しさを隠しながら、仏頂面で聞く。もちろん目なんて合わせてやらない。
「チョコ、固くて歯がかけたから文句を言いに」
ばっとセンセの目を見る。……笑ってる。
「うまかったよ、ありがとう」
「別にあんたにあげようとしたわけじゃないし、勝手に食べないでよ」
「お前のチョコは俺のものだよ」
かぁっと顔が熱くなる。なんか、悔しい。
「いてっ」
げしっと足を蹴った。そのときやっと気づいた、シワシワの背広。
(こんなになるまで探してくれたんだ)
あふれそうになる、愛されてるっていう自惚れ。
「悪かったな」
頭をポリポリかきながら、笑う。
「本当だよ」
眉にしわを寄せたまま、彼の胸に頭を預ける。
「好きだよ」
耳元に囁かれた彼の言葉で、たくさんのイライラが消えた。
「ただ、あのチョコは岩だ。バキッて折れるチョコなんて聞いたことがねぇ」
私はキスの代わりに、彼の胸に頭突きをかました。
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