進化、そして夢へ…

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「椎名さん!大丈夫?」 「先生…私、どうして…」 「体育館で、ポールの下敷きになって倒れてたのよ。覚えてないの?」 怜華は少し考え、麻奈に話し始めた。 「あ…そういえば、4本目のポールを運んでいる時に目眩がしたんです。発作の時より大きな…。何日か前から風邪気味でした」 「やっぱり。あなたが意識を失ってる間に、熱を計らせてもらったわ。7.8度…普通この熱だったら動くのがやっとよ。なのに重いポールを一人で運ぶなんて…。椎名さん、絶対に無理しないっていう約束、忘れちゃった?」 麻奈は怜華が約束を守らなかった事を怒らずに、優しく話し掛けた。 「ごめんなさい、先生。私、一刻も早く徳王高校に受かる程の頭脳がほしかったんです。だから微熱くらいで休んでいられないと思って、つい無理をしてしまいました」 「そう…。自分でも無理をしちゃいけないって、分かってたんでしょ?」 怜華は、こくんとうなずく。 「あなたの気持ちはよく分かるわ。大丈夫。椎名さんだったら徳王高校に合格出来る。だって、前より成績が上がってるもの。短期間でこんなに伸びるなんて凄いわ。だからもう一度約束して。今後、絶対に自分の体に鞭打って一人で背負わないこと。私が担任に就いた頃とは、全然違うわ。顔が明るくなってるもの。授業に対しても前向きになったって、教科の先生が話してたわ」 「先生…今の私の成績、徳王高校に受かる程になっているんでしょうか?もしそれに達していなかったら、私どうすれば…」 怜華は成績が上がった事に喜びながらも、それが本物の実力なのかただのマグレなのか、疑っていた。 「大丈夫。高校受験まで1年あるんだもの。じっくり勉強していけばいいわ」 「無理をせず、自分のペースでゆっくりと」 麻奈は、怜華が自分の言いたい事を受け止めてくれたようで嬉しくなり、思わず笑みをこぼした。怜華も自然と笑顔になり、少女らしく愛らしい表情を見せた。
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