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高央と出会って一週間後、彼から『写真が出来た』との連絡をもらった怜華は、すぐに待ち合わせ場所の公園へ出掛けていった。
この日は中学校の開校記念日で怜華も休みなので、トレーナーにルームウェア(両側にピンクのラインが入ったジャージっぽいの)である。公園の入り口を抜けると、ベンチに座って怜華に手を振る高央の姿があった。
「怜華ちゃん、こっち!」
怜華は高央に手を振り返す。
「この間の写真、きれいに出来たよ。ほら」
怜華は高央の隣に座って、手渡された写真を見る。そこには怜華の輪郭や表情がくっきり写っている。
「どう?女優さんみたいでしょ?」
「はい。私…自分がこんなに輝いて見えるなんて思いませんでした」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。僕も、怜華ちゃんを撮って本当によかったと心から思ってる」
怜華を見つめ、彼女もまた高央を見つめ返す。彼の澄んだ瞳をじっと見ているうちに、あの訳の分からない鼓動が動いているのに気付いた。そして自然と涙が溢れ出てきた。
「ど、どうしたの?写真が気に入らなかった?」
「いいえ。こんなに優しい目で私の事を見てくれたので、嬉しくなって…。私、両親と奥屋先生以外、冷たい目で見られてるから…」
高央は本当に優しい目をしていた。真っ向から怜華と向き合って、嘘のない黒い瞳を怜華から離さないでいる。
「そっか…。怜華ちゃん、相当辛い思いをしてきたんだね。でもこれからは一人じゃないよ」
「え?高央さん…?」
「家に帰って怜華ちゃんの写真を現像した時、この先何年も怜華ちゃんと関わっていくような気がしたんだ」
「えっ⁉私も同じ気持ちになったんです!」
二人は驚いたように顔を見合わせる。これはもう、偶然とは言えなくなった。何か運命的なものが二人を引き合わせたに違いない。高央はフッと微笑み、空を見上げる。
「不思議だね。これは本当に、縁があるかも」
「縁…ですか」
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