日常

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「拓真たちは、まだ裏賭けやっとるんやろ?」  今はクール便という会社に勤めている亮と馨だが、ほんの少し前まで、拓真と直樹と一緒に裏賭けのチームを組んでいた。チーム名は、「Pin-Key(ピンキー)」。たった一人だけでも、鍵になるように、と亮がつけた。亮は、その腕前が大きく評価されて、裏賭けの世界のなかでは、そこそこ名の通ったプレイヤーだった。  亮と馨が抜けたあとも、普通はリーダーであった亮が抜けたのだから、解散してもいいのだが、拓真と直樹がそれを拒否した。 「ソレ、やってかないと食いっぱぐれますから。」 「配達も結構儲かるでぇ。どや?拓真も?」  軽く笑った拓真に亮は、片手でお金のマークを作りながら笑った。 「勧誘ですか?でも、俺、集団に属すの性に合わないんで。」  同意を求めるように、横に静かに待機していたフライングのグリに顔を向ける。主人の意識は見事に伝わっていたのか、小さくグリがほえる。  亮と馨、直樹と供に裏賭けのチームと言えど「Pin-Key」に属していたのだから、集団そのものが嫌いというわけではないはずである。 「・・・そか。なら、わいかて野暮なことはせぇへん。馨、仕事行くで。」  でも、亮は何も言わずにどうやら、目的は果たしたと言うように隣で涼しい顔をしたフライングのアオに飛び乗った。 「えーー!まだ、おりたいねんけど?」  直樹とギャアギャア騒いでいた馨は、亮の言葉にあからさまに不機嫌そうな声を向けた。 「そんなんダメに決まっとるやろ。こっちは仕事や。行くで。」 「・・・ほな、またな。」  真面目に言っているのか、言っていないのかくらいは、さすがの馨もわかる。本気で怒ると怖い亮を怒らせる前に従うのが、正しいと判断した馨は大人しく、デラックススペシャル佐田馨様特別仕様フライングデルビダ・A・クロニクルに乗ると、大げさに手を振って空に溶けて行った。 「俺らもおっさんのとこ行こうぜ。」 「おう。」  二人は、亮と馨とは反対方向へ騒がしさがいなくなってしまった屋上を去った。
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