0人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
数分飛んでいると、錆びれた茶色いこじんまりとした建物が下に現れる。
「こんちゃーおっさん?おるー?」
「お、なんだ。拓真と直樹じゃねぇか。裏賭けか?」
奥から小柄な人影がのっそりと出てきた。
少し酒臭い息を吐き出しながら小さく笑った。
「そそ。いつなら空きある?」
少し古ぼけたカウンターに乗り上げながら直樹が言う。
直樹の言葉に憎たらしい笑い声を残し、カウンターの下に潜り込む。ガサゴソと蠢くカウンター。
数分後、現れたおっさんの手には、数枚の紙切れが握られていた。
「あー・・・最近人数制限がなぁ・・・土曜なんかどうだ?」
紙切れを手にしたおっさんが顔をしかめた。
「おう、いつも暇やからな~ええよな?」
「ええよなって・・・どうせ、聞く気、ねぇんだろ?」
「わかっとるならええねん。おっさん、よろしくー」
苦笑した拓真にかまわずに直樹は、おっさんが紙切れからむしりとったエントリーの半券をもらった。
「今回は何番?」
「ラッキー7や。」
裏賭けは名前こそ大層悪ぶった名前だが、協議内容的にはとても公平を重要視する。
どんな改造を施してもかまわないが、相手の命を奪うようなものはご法度。ようは、相手が傷つくことがなければ、何をやろうと平気。相手のフライングに特殊な電波を打ち込んで、相手の動きを封じるなんてことも相手に傷を負わせないのでオーケーだ。万が一にでも、相手を殺すようなことがあるとこの世からの抹消は免れない。裏賭けに参加する全てのフライング操縦者たちが襲い掛かる。
そのために裏賭けと繋がった部品屋などが、裏賭けのエントリーシートを持っている。大会前日までに全ての部品屋から集まったエントリーシートを元に、本部がリスト化。当日にはその半券が必要となる。リストは万が一の時の対策がすぐに行えるようにだ。
そこまで、公平を掲げる裏賭けだが、一般的には毛嫌いされている。やはり、人を傷つけないと言えど、違法改造、所詮賭け事という事実が世間体的に悪く見られてしまうのだ。
「賞金は?」
「そこまで、デカないで。一万二千ちょいや。」
「まぁ、そんなもんだろ。」
「これでワンツーフィニッシュやったら、飯いこな。」
「二位のやつのおごりだろ?」
「へッ・・・ガキどもが調子にのってると痛い目にあうぞ。」
楽しそうに話していた二人におっさんは、厳しく突っ込み、一升瓶を年甲斐なく呷った。
最初のコメントを投稿しよう!