裏賭け

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「裏賭け、エントリーはコチラですー」  土曜日。路地裏の狭い道を通り抜けた先の開けた広場。  その一角に小さな黒いテントが、こじんまりと建てられていた。 「ども。」 「こんにちは、『Pin-Key』のお二人。」  黒いフレームの眼鏡をかけた男は、直樹から半券を受け取る。  受付の人間とは顔なじみになるほど二人は、毎回と言っていいほど裏賭けの大会には顔を出していた。 「参加人数は十三名・・・・今回は結構手ごわい人が多いですよ。」  男が処理をしている間に周囲の参加者たちを眺めていた二人に言った。 「大丈夫や、俺たち腕ええからな。」 「なぁ、直樹・・・あのインテリ眼鏡・・・初めて見る顔だ。」  直樹と同様に周囲を見回していた拓真がぼやく。 その視線の先には、髪をキッチリと後ろに上げ、銀のフレームの眼鏡をした男がフライングと立っていた。周囲の参加者が、ジャージのようなラフな格好をしているのに、その男とその周りにいる数人の男たちだけが同じようなスーツを着ていた。  裏賭けは、ほとんど決まったような顔ぶれで行われる。あまり新参者はいない。新参者がいるとしても、拓真のようなやっと十五歳以上になって、参加権を得られたというような若者しかいない。そうそう大人になってから、裏賭けに参加しようとするものはいないのだ。  むしろ、あんなかっちりと真面目そうな人間は特に。 「あ、あの人ちょっと怪しいんですよね。こっちでも警戒態勢をとってるんですが・・・」 「何?」 「ちょっと、お偉いさんと手が繋がってるみたいで大っぴらに言えないんですよね。」  受付の男が、顔を濁らせながら笑った。 「まぁ、俺らも注意しとくさかい。周りにも言うとくわ。」 「うん、よろしくね。はい、手続き終了だよ。がんばってね。」  丸い番号の書かれたシールを受け取り、拓真と直樹も広場に足を向けた。
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