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そして、テンパった私は走ってその場を逃げた次第である。
だって、私、私には海ちゃんが……。
「どうしよぉ、海ちゃぁん……!!」
部屋のソファに座りながら、私はその右手首に嵌めた時計を見つめた。
銀の真ん中に白い時計盤があり、同じく銀の秒針がチッチッと動く、動かした時から一度も止まった事の無い時計。
何故だかは解らないけど、人が付けている限り止まる事のない時計らしい。
昔海ちゃんが、色違いのお揃いで買ったとプレゼントしてくれた時計。
海ちゃんのは時計盤が黒だった。
……これは、海ちゃんが、私と居た証。
「あの人、私の事好きだって。 私に、付き合ってって。 無理だよ、だって、私には海ちゃんが居るんだもの……」
ギュッと時計を嵌めた右手首を握りしめる。
冷たく硬い、もうすっかり握り慣れてしまったその落ち着く感触。
「海ちゃん……、どぉすればいいのぉ……?」
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