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「ったく……友達つくる前から喧嘩か?まぁ一方的みたいだが……」
綾瀬先生は、俺を椅子に座らせると、何やらごそごそと探しにいった。
俺の涙は既に干からびていて、思い出すと、さっき泣いたのが恥ずかしくなってくる。
……なので、思い出さないことにしよう。
「綾瀬先生は……何で俺の教室に……?」
「バ~カ、見回ってただけだ。何もお前の教室だけって訳じゃない。何だ…?自分が特別扱いされてるとか……?」
「思ってません」
この人に、真面目に質問した俺が馬鹿だった。
今も、笑いながら何かを探している。
「何を探してるんですか?」
「ん?いいものだ、いいもの~。……お、あったぞ」
ようやく見つけたようで、綾瀬先生がこっちに戻ってくる。
「ほら、腹出せ」
「えっ!?」
「何をでかい声出してんだ……。湿布貼るから、腹を出せと言ってんだよ」
あぁ……そういうことか……
いきなりこの流れで、‘腹を出せ’は警戒するって……
俺は渋々、綾瀬先生の指示通り、腹を出した。
……ん?出したというより、見せた…か?
まぁいい。
「お~、やっぱり痣になってんなぁ…」
腹は赤だったり青だったりしていて、殴られた場所がズキズキと痛む。
「うっ……」
「痛いか…そりゃそうだろうな。じゃ、貼るぞ」
綾瀬先生はそう言いながら、探してきた湿布を、そろ~っと腹に当てた。
床とは違う冷たさ……
ひんやりした感覚が、腹から全身に伝わってくる。
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