救いの手

13/26
前へ
/123ページ
次へ
「どうだ?少しは楽になったろ?」 まぁ確かに…… 痛みは少し和らぎ、湿布の冷たさが心地よく思えた。 「ありがとうございます…」 「一応、保健医だからな」 一応……か。 まったくもってその通りだ。 「じゃ、暗くなる前にとっとと帰れよ~」 そう言うと、綾瀬先生はスタスタと、ドアに向かって歩き出した。 ガララ… そのまま、ドアを開けてどっかに行こうとする綾瀬先生を、慌てて引き止める。 「あのっ…先生……!今日のこと……」 俺がそこまで言うと、綾瀬先生はこっちを向いて、ニッと笑った。 「わーってる。誰にも言わんて。ほんじゃな」 それだけ残して、綾瀬先生は保健室を出て行った。 まったく…… 頼りになるのかならないのか…… ただ、この学校の保健医が、綾瀬先生でよかった…… 俺はそう噛み締めていた。 時計を見ると、針は先程から一つ進んだ17時を指している。 帰るか…… 俺は保健室を出て、下駄箱に向かおうとしたが、肝心なことに気付き、進路を急変更した。 「バッグ……」 結局、さっきのせいで、バッグは教室内に置きっぱなしだった…… しかも、殴られたとこだから、ちょうど出入口のところだな…… 急いで、自分の教室へと向かう。  
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加