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「どうだ?少しは楽になったろ?」
まぁ確かに……
痛みは少し和らぎ、湿布の冷たさが心地よく思えた。
「ありがとうございます…」
「一応、保健医だからな」
一応……か。
まったくもってその通りだ。
「じゃ、暗くなる前にとっとと帰れよ~」
そう言うと、綾瀬先生はスタスタと、ドアに向かって歩き出した。
ガララ…
そのまま、ドアを開けてどっかに行こうとする綾瀬先生を、慌てて引き止める。
「あのっ…先生……!今日のこと……」
俺がそこまで言うと、綾瀬先生はこっちを向いて、ニッと笑った。
「わーってる。誰にも言わんて。ほんじゃな」
それだけ残して、綾瀬先生は保健室を出て行った。
まったく……
頼りになるのかならないのか……
ただ、この学校の保健医が、綾瀬先生でよかった……
俺はそう噛み締めていた。
時計を見ると、針は先程から一つ進んだ17時を指している。
帰るか……
俺は保健室を出て、下駄箱に向かおうとしたが、肝心なことに気付き、進路を急変更した。
「バッグ……」
結局、さっきのせいで、バッグは教室内に置きっぱなしだった……
しかも、殴られたとこだから、ちょうど出入口のところだな……
急いで、自分の教室へと向かう。
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