救いの手

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……下校道。 学校から、そんなに離れていない場所にある我が家へは、大体徒歩十分足らずぐらい。 家には既に、二人の妹が待っていることだろう。 だが、俺はまっすぐ帰る気にはなれなかった。 和らいだは和らいだが、やはりまだ痛い。 この傷……いや痣を、妹達にばれる訳にはいかない。 いつもの、元気な兄を演じなければならない。 家とは、少し違う方向にある公園のベンチに、腰をおろして一息つく。 「はぁ~っ……」 帰ったら、夕飯つくって…… 風呂入らせて…… 学校からのお知らせとかをチェックして…… いつも同じことの繰り返し。 親でなくても、俺でも出来ることは、何でもしなければならない。 いつしか決められた、暗黙の了解というやつだ。 さて…… そろそろ帰るか…… 梨乃も紫織も腹すかしてる頃だしな… そう思ったら、俺の腹が静かにないた。 はは…… 一番すかしてんのは俺みたいだな…… いくら強がっても、身体は正直だ。 多分、今は成長期というやつで、昼飯を抜くだけでも、かなりきつい。 俺はもう慣れたと思っていたのだが、いつだって精神より肉体のほうが、早く限界を超えてしまう。 はぁ…… 今日は何つくろっかな…… 冷蔵庫に、何残ってたっけ……? 公園から家までの帰路の途中、俺はずっと晩飯のメニューだけを考えた。  
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