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「別に構わんが、私は用事があるから、少し出るぞ?」
「あ、ハイ…大丈夫です。いってらっしゃい」
「そうか、じゃあまたな」
あっさりと保険医は出て行ってしまい、保険室には俺と野木だけがとり残された。
「ねぇ…西川くん…」
カーテンの向こうから、俺を呼ぶ野木の声が聞こえる。
無視してもよかったが、俺は返事をした。
「何だ……?」
すると、目の前のカーテンが、ゆっくりと開かれた。
「私と友達にならない?」
思いがけない野木の言葉に、俺の思考回路は一時停止した。
「友達……?俺と……?」
状況整理が追い付かない。
友達って何だ……?
「うん……私、西川くんと友達になりたいな」
ようやく、理解速度が落ち着いてくる。
俺と友達……?野木が……?
理解は出来たが、理由がわからない。
「何で俺なんかと……」
「……ダメかな?」
なぜか野木は、理由を言おうとはせず、許可だけを聞いてきた。
しかし、俺自体には否定する理由はなかった。
「別にいいけど……」
俺がそう言うと、野木は嬉しそうに、包帯の巻かれていない手で握手をしてきた。
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