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…………俺の不安は杞憂だった。
それもそのはず。
クラスにいてもいなくても、どーだっていい奴のことなんか、誰も見る訳がなく、ただただガヤガヤと騒いでいるだけだった。
「西川くん……嫌だった?」
不安げにこちらを見てくる野木。
少し強めに振り払ってしまったためか、おどおどしていた。
野木に悪いことしたな……
つい焦って、余計な力が加わってしまった。
「いや…違うんだ…。その…恥ずかしくて…」
この発言自体が恥ずかしい。
教室内で、こんなに赤くなったのは初めてのことだった。
俺がそう言うと、野木は不安から解き放たれ、ホッとした顔で微笑んでいた。
「よかった。…ね、西川くんっ」
「ん?」
「主人公の友人役……見つけられそう?」
………お見通しか。
そりゃそうだろうな……
昨日、友達はいないと言ったばかりなのだから。
あてがないことぐらい、誰だってわかる……
「……見つけられそうにないな」
そう言うと、野木は誇らしげに胸を張ってきた。
「フッフ~ン、私に任せて!」
「え……いいのか……?」
願ってもない。
是非とも任したいところだ。
「友達は放っておけないからっ。じゃ、西川くんはしっかり読んでおいてね」
野木は慌ただしく、駆けていってしまった。
友達……か。
心の安らぐ響きだな……
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