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……二時間目は数学。
この授業の時ほど、生徒たちが真面目になる時はない。
校内の生徒すべてが、そう断言しているといっても過言ではない。
それはただ単に、数学を受け持つ神田先生が、常に校内で最も怖い先生ナンバーワンの座を、離れないからという、それだけの理由だ。
授業五分前に出ていった野木も、一分後には教科書・ノートをセットし、大人しく席についているくらいだ。
そして今……
ゆっくりと秒針が、授業開始時間を通過……
ガララ…
「欠席は?」
教室内に入り、教卓につくと同時に、重く低い声で聞く神田先生。
「いないです」
すかさず答える委員長。
いつもの光景だ。
「よし…。ノートを開け、教科書は25ページ」
バッ…!
生徒たちの、教科書とノートを開く音が重なり、何かの効果音と化している。
「昨日やった公式……まさか忘れてる奴はいないよな? いたら手…上げな」
もはや一種の脅しだ。
こんなんじゃ、上げたくても上げれないのが本音だろう。
……ちなみに俺はしかと覚えている。
忘れるなどという、愚かな行為をする度胸がないだけだ。
………………
もちろん、自殺希望者なんているはずもなく、誰も手を上げずに、沈黙だけが流れていた。
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