そしてまた一人

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「……全員、覚えてるんだな……? 忘れた奴は今の内に言っておけよ? 後からじゃ遅いからな…?」 そう言われると、覚えているはずの公式が怪しく思えてきて、合ってるか合ってないかと試行錯誤してしまい、かえって忘れてしまいそうで怖い。 俺の脳内が、軽いパニック状態になっていた。 「……じゃあ聞いてみるか。全員覚えてるってことは、誰に聞いても即答で答えられるんだからな」 そう言いながら、神田先生は教室内を見回していく。 恐らく、自信のなさそうな者を選出するつもりなのだろう。 「誰にするか……」 多分……いや、きっと。 この中に、忘れている奴は存在するだろう。 全員が覚えているほど、このクラスは出来たクラスじゃあない。 むしろ、半分近くが忘れているかも知れない、だいぶ落ちぶれているクラスだ。 「よし……」 ……どうやら決まってしまったようだ。 これから、呼ばれるであろう人物は、哀れとしかいいようがないな。 たとえ、公式を覚えていようがいなかろうが………  
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