告白したい

そしてまた一人

「……野木……、公式を黒板に書け」

………！

野木が……
まさか、あの野木が公式を忘れてるワケがないよな……

数学が得意なのかどうかは、知っているはずもないが、真面目かどうかくらいは知っている。

野木は宿題は欠かさずやってきてるし、クラスの中でもかなり上位に位置するほどの優等生だと思う。

野木はゆっくりと立ち上がり、黒板に向かって一歩ずつ前進していく。

その間、神田先生は生徒たちのノートを見て回っている。

カッ…カッカッ…

チョークの音が響く。
心なしか、野木の指が震えているようにも見えたが、気のせいだろう……

コトン。

野木がチョークを、あった場所に戻し、自分の席へと戻ってくる。

神田先生は、教卓へと戻っていく。

「………よし、覚えてたな」

神田先生のその言葉に、なぜか安心している俺がいた。
まるで、自分のことのように、ドクンドクンと暴れ出した心臓を落ち着かせる。

「野木には、予習の成果を見せてもらおう」

………やっぱりだ………

公式を覚えていなかったら、そのことで怒られる。
覚えていたら、もはや毎日の宿題となってしまっている、予習の成果を披露することになるのだ。

覚えていようがいまいが……
哀れなことに変わりはない

という意味がわかってくれたことと思う。