そしてまた一人

5/14
前へ
/123ページ
次へ
「今日は昨日覚えた公式の応用だったな。野木、25ページの問3を黒板に解け。他の奴らは、ノートに解け」 普通の学校だったら、どんな授業をしているのだろうか。 教師が例題を解いて見せて、練習問題を生徒たちに解かせる。 そんな感じか? それだったら、どんなに楽なことか…… 俺には予習なんてする暇もない。 予習なんかよりも、妹たちの方が大切だ。 けど、野木は……? ………! もしかして、昨日のメールで時間割を聞いてきた理由って……… …………そうだとしたら、俺はどうやって野木にお詫びをすればいいのだろう。 あの野木のことだ。 予習だって毎回、欠かさずにやっているに違いない。 それがたまたま、今日数学があるかどうかを忘れてしまい、俺にメールで聞いてきた。 いつも話している女友達には、聞けない雰囲気があったんだろう。 俺が一人、考えを巡らせる中、野木は再び黒板の前に立っていた。 右手にチョークを握っていたが、その手は下がったままだ。 野木…… 助けてあげたい…… 俺の友達を…… ………どうすれば………?  
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加